23Apr

体成分の4%を占める数十種類の元素
人体の成分として体内に存在する元素は、約60種類といわれています。
最も多いのが酸素で65%、次いで炭素18%、水素10%、窒素3%であり、この4元素
で96%を占めています。
ミネラル(無機質)とは、残りの4%にあたる元素すべてを指しています。
このうち、1日の必要量が100mg以上のものを主要ミネラルといい、人での必須性が認められているのは7種類です。
また、100mg未満のものを微量ミネラルといい、人での必須性が認められているのは9種類です。
カルシウム、リン、マグネシウムなどのミネラルは、骨や歯などの硬組織をつくります。
また、ヘモグロビンの鉄、リン脂質のリン、含硫アミノ酸のイオウはタンパク質や脂質などと結合し、体成分となっています。
ナトリウム、カリウム、塩素、マグネシウム、リンなどは体液中にイオンとして存在し、浸透圧の調整、酸アルカリ平衡、筋肉収縮や神経伝達に関わります。
マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛、コバルト、ヨウ素などは、酵素の補酵素や生理活性物質の成分として、代謝調節に関わっています。
体液の恒常性と適正摂取量
体液や組織液のミネラルは、いつも一定の濃度で保たれています。
この恒常性は、生理的要求量、吸収量、体内貯蔵量、排泄(はいせつ)量を調整することにより保たれています。
食事から摂取するミネラルの不足や過剰が長く続くと、体液や組織液のミネラルの※恒常性が保てなくなり、各ミネラルに特有の欠乏症や過剰症が現れます。
そこで、ミネラルの適正摂取のために、「日本人の食事摂取基準」では、推定平均摂取量、推奨量、目安量、耐容上限量が設定されています。
※恒常性(ホメオスタシス)・・・体温、体液のpHや浸透圧は身体活動や環境条件により変化しますが、これらの内部環境条件を一定に保つことです。恒常性を保つ能力が高いほど健康度が高いといえます。
足りないミネラルと過剰なミネラル
日本人の栄養素摂取をみると、カルシウムは推奨量に達していない唯一の栄養素です。
また、鉄も推奨量を満たしていない年齢階層があります。
一方、食塩は1人、1日当たり11~12gも摂取しています。
この10年ほどで徐々に減ってきてはいますが、食塩の目標摂取量は男性9g未満、女性7.5g未満で、まだ適正ではありません。
また、この値は目標摂取量5g未満とするアメリカより遥かに高い値です。
必須性が認められているミネラルの種類と性質
【主要ミネラルの種類と性質】
ミネラル | 存在量(g) | 体重の対する割合(%) | 生理作用 | 欠乏症 |
---|---|---|---|---|
カルシウム(Ca) | 1000 | 1.4 | 骨や歯の成分。血液を凝固させ、筋肉の収縮、神経伝達に関わる。 | 骨粗しょう症 |
リン(P) | 780 | 1.1 | 骨や歯の成分。補酵素・核酸・リン脂質の成分。エネルギー代謝に関わる。酸・塩基のバランスを保持する。 | 低P血症においては全身倦怠感、食欲不振、脱力感など。 |
イオウ(S) | 140 | 0.2 | 含硫アミノ酸の成分。酸性ムコ多糖類・チアミンなどビタミンの構成成分。 | ※タンパク質が適切に摂取されていれば不足しない。 |
カリウム(K) | 140 | 0.2 | 細胞内液に存在し、酸・塩基バランスを保つ、神経の刺激を伝達する。浸透圧を保つ。 | 筋肉の減退、頻脈(ひんみゃく)、無気力 |
ナトリウム(Na) | 100 | 0.14 | 細胞外液に存在し、酸・塩基バランスを保つ、神経の刺激を伝達する。浸透圧を保つ、物質の能動輸送に関わります。 | 全身の倦怠感、頭痛、嘔吐、血圧降下 |
マグネシウム(Mg) | 19 | 0.027 | 骨・歯の成分。エネルギー代謝に関わる。酵素を活性化する。 | 神経過敏症、精神障害、不整脈、循環器疾病 |
【微量ミネラルの種類と性質】
ミネラル | 存在量(g) | 体重に対する割合(%) | 生理作用 | 欠乏症 |
---|---|---|---|---|
鉄(Fe) | 4.2 | 0.006 | ヘモグロビン・ミオグロビンの成分。酵素成分として細胞の呼吸系に関わる。 | 鉄欠乏性貧血 |
ヨウ素(I) | 0.013 | 0.00002 | 甲状腺ホルモンの成分。代謝を促進する。 | 発育阻害、甲状腺肥大 |
亜鉛(Zn) | 2.3 | 0.0013 | 酵素の成分。酵素の活性化物質としてタンパク質・脂質・糖代謝に関わる。 | 感覚機能異常、皮膚炎、口内炎、免疫不全 |
銅(Cu) | 0.072 | 0.00010 | 酵素の成分として、ヘモグロビンの合成に関わる。 | 貧血、毛・皮膚の脱色、白血球減少、骨年齢の低下 |
セレン(Se) | 0.013 | 0.00002 | 酵素の成分として、脂質過酸化物の還元に関わる。 | 克山(こつざん)病=心筋症 |
マンガン(Mn) | 0.012 | 0.00002 | 酵素の成分として、酸性ムコ多糖類を合成、酵素を活性化する。 | 骨発育遅延、皮膚炎 |
コバルト(Co) | 0.0015 | 0.000002 | ビタミンB₁₂の成分 | ビタミンB₁₂欠乏による悪性貧血 |
モリブデン(Mo) | <0.0093 | 0.00001 | 酵素の成分または酵素の活性化物質として、アミノ酸・尿酸・硫酸の代謝に関わる。 | 高メチオニン血症、 低尿酸血症、頻脈 |
クロム(Cr) | <0.0018 | 0.000003 | 糖代謝、コレステロール代謝に関わる。 | インスリン感受性低下、末梢神経障害 |