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サプリメントの基礎知識と選び方バイブル

栄養状態がいい人は術後の回復も早い

ガンが見つかって治療することになった場合、手術・抗ガン剤・放射線が三大治療であり、手術ができるなら手術が第一選択肢というのは、皆さんご存じのとおりです。それで手術を受ける人が多いのですが、同じガンの同じような進行度の人でも、栄養状態によって手術の予後は全く異なります。もちろん、栄養状態の良い人のほうが予後も良いわけです。

手術を受ける際に必要となるのは、身体を作る材料であるタンパク質と、エネルギー源である糖質と脂質です。また「手術と栄養」というと、術後の栄養を思い浮かべる人が多いと思いますが、予後の善し悪しには術前の栄養と術後の栄養の両方が関係します。

術前にきちんと栄養補給を行って患者の栄養状態を良くしてからでないと、手術によって身体が弱り、傷の治りも遅く、感染症などの合併症を発症する確率が高くなってしまうのです。

そこで手術の前には、まず患者の栄養アセスメント、すなわち栄養状態の評価を行う必要があります。患者の栄養状態を調べ、不足している栄養素があるか否かや、不足がある場合はどの栄養素をどの程度、どんな方法で補えば良いかなどを判断し、栄養を補充してから手術をするのです。

栄養状態を評価する際の重要な指標の1つである「血清アルブミン値」(血液中のアルブミン値)と、術後の合併症発生率や死亡率を調べたデータを見ると、栄養状態と予後の関係がはっきりと分かります。血清アルブミン値が4.6g/dlと充分な場合は、術後30日以内の合併症発生率は10%、死亡率は1%未満ですが、2.1g/dlと半分以下の場合は、合併症発生率は65%に、死亡率は29%に跳ね上がるのです。

アルブミンは血液中にあるタンパク質の一種で、3.0g/dl以下の場合は栄養障害と判定されます。ただし、血清アルブミン値は栄養障害でなくても下がることがありますし、半減期(血中濃度が2分の1になるまでの期間)が21日と長いため、2~3日程度の短期的な栄養状態は反映できません。

したがって栄養評価に際しては、血清アルブミン値だけでなく、血液検査や尿検査で得られた それ以外のデータ、すなわち「客観的栄養評価」と、体重の変化や食事摂取量など患者本人の申告による「主観的栄養評価」を合わせて、総合的に見なければなりません。

それにしても何故、手術前にタンパク質とエネルギーを満タンにしておく必要があるのでしょうか。手術をしたら直ぐに点滴をすればいいのではないでしょうか?

私たちの身体は、手術やケガなどによって傷つくと、様々なホルモンやサイトカインを出して、血流量や血圧を維持しようとします。このときに出るホルモンには血糖上昇作用があり、血糖値が上昇します。それに対して、血糖を下げる効果のあるインスリンの分泌量は増加するのですが、それを感知するレセプター(受容体)の機能が一時的に低下するため、血糖を細胞に取り込むことができず、手術後は高血糖になります。これを「外科的高血糖」または「外科的糖尿病状態」と呼びます。

手術後は、手術によって傷ついた細胞を修復するために大量のエネルギーが必要なのに、エネルギー源である糖を細胞内に取り込んで代謝することが出来ないわけです。要するに、高カロリーの輸液を点滴などで入れても、うまく利用できないのです。

したがって、栄養補給がうまくいかないこの時期を乗り切って速やかに回復していくためには、手術前に栄養状態を良くしておくことがとても大切なのです。特に、手術後に合併症をきたすと、この糖をコントロールする機能の回復が遅れ、どんどん身体のタンパク質や脂肪が使われてしまい、著しい痩せをきたすことになります。

手術後の栄養はどうでしょうか?

まず、絶食期間をできる限り短くすることが重要です。絶食期間が長くなると、口から食べること自体がうまくできなくなってしまったり、小腸の粘膜が委縮してしまったりするからです。小腸の粘膜を萎縮させないことがなぜ重要かは後ほど述べますが、基本的に手術前4時間と手術後12時間の計16時間以上は絶食させないことです。

たとえ胃や腸などの消化管の手術をした人でも、唾液をはじめとする消化液は出ていて、消化管を通過しているわけですから、少量の水分ぐらい摂取しても何の問題もありません。唾液だけでも1日に1000ml、胃液、胆汁、膵液、腸液などを合わせると7000~8000mlも出るのです。そのため、ごく少量で効果のある栄養剤を口から飲める人は口から、ダメな人は鼻から胃に管を入れるなどして摂ってもらうことです。この栄養についても後ほど述べます。

具体的にどの栄養素をどれくらい入れるかは「栄養アセスメント」に基づいて決めますが、基本的には以下のように考えます。

まず手術直後の、糖を細胞に取り込めない間は、充分なエネルギーを
投与しても代謝されにくいので、タンパク質が必要以上に崩壊されないような栄養管理をします。タンパク質の元となるアミノ酸のうち、BCAAが特に有効です。またアミノ酸は、傷ついた組織の修復や免疫細胞の補充に必要であるうえに、エネルギー源としても代謝されてしまうからです。

したがって、分量はタンパク質から先に決めていきます。

  1. 投与する総エネルギーのうち、タンパク質がまずどれくらいかを決める。
  2. その次に、脂肪の量を決める。
  3. それから糖の量を決める。
  4. さらに、ビタミンやミネラルの量を決める。

このようにして、どの栄養をどれくらい入れるかを決めていくのです。

1日必要エネルギー量は「基礎エネルギー消費量」に「活動係数」と「ストレス係数(侵襲因子)」を掛けて算出します。

「1日必要エネルギー量=基礎エネルギー消費量×活動係数×ストレス係数(侵襲因子)」です。

基礎エネルギー消費量は、安静な状態の健常な人が消費するエネルギーです。基礎エネルギー消費量には、いくつかの算出法がありますが、臨床的に広く用いられているのは「ハリス・ベネディクトの式」を使う方法です。

男性:基礎エネルギー消費量(kcal/日)=66.5+(13.7×体重kg)+(5×身長cm)-(6.8×年齢)

女性:基礎エネルギー消費量(kcal/日)=665.1+(9.6×体重kg)+(1.8×身長cm)-(4.7×年齢)

この式で算出した数値に、どれくらい運動量があるかという活動係数と侵襲の大きさによって決まるストレス係数を掛けます。侵襲とは、生体の恒常性を侵すこと、平たくいえば「傷つけるなどして、身体をいつもと違う状態にすること」すべてを指し、ケガや骨折、感染症などだけでなく、手術や注射、投薬などの医療行為も含みます。

活動係数はここでは、安静の場合は1.0、歩行可能な場合は1.2、労働状態に応じて1.4~1.8に設定します。

ストレス係数は、重症度に応じて1.2~1.8に設定します。手術後3日間のストレス係数は、乳房切除などの軽度が1.2、大腸切除などの中等度が1.4、胃全摘などの高度が1.6、肝切除や食道切除などの超高度が1.8などとなっています。侵襲度の高い手術を受ければ受けるほど、たくさんエネルギーが必要になるのです。

このストレス係数を考慮しないで投与するエネルギー量を決めてしまうと、エネルギー不足に陥ってタンパク質の崩壊が進みます。そして、手術したのはいいけれど筋肉が細ってしまい、歩いて退院できない、といった事態が起こるのです。

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