16Jun

動脈硬化が起こる仕組みを説明しましょう。
動脈の血管が老化などで弾力性を失い、硬くなっていきます。
血管の内側にコレステロールなどの塊(粥腫=じゃくしゅ)が付着するようになると、血管がさらに硬くなって破れやすくなったり、狭くなって血流が悪化して詰まったりしてきます。
そうして血流が滞った結果、さらに高血圧が進み、心筋梗塞や脳梗塞、くも膜下出血などの重大な症状を引き起こしてしまいます。
動脈硬化というと、これまではどうしてもコレステロールが原因とされがちでした。
このコレステロールの塊が思い浮かぶためでしょう。
この塊のもとがLDLコレステロールであるため、最近はLDLコレステロールが悪玉として強調され、メタボ健診でもLDLコレステロール値が測定されるようになっています。
そのため、40代からは、動脈硬化を気にして肉の摂取量を減らそうとする人が増えてきます。
「コレステロールは動物性脂肪だから、肉は避けたほうがいい」と、いまだに指導されることも多いでしょう。
しかし、もうそろそろ、こうした間違った認識からは脱却していただきたいものです。
上の図表から分かるように、年代につれて動物性タンパク質、つまり肉や魚、卵などの摂取量が増えています。
大豆などの植物性タンパク質の量は減少し、1970年代後半から、両者の割合が逆転しています。
その後、植物性タンパク質は横ばい状態ですが、動物性タンパク質は、なお増え続けています。
日本人の平均寿命が世界一になるのは、実はこの頃からなのです。
世界の食糧事情の変化を見ても、動物性タンパク質の摂取比率が50パーセントを超えないと、平均寿命は延びてきません。
アジアではこれを維持できているのは、日本と香港だけです。
下の図表を上の図表と合わせて見ると、動物性タンパク質の摂取量が半分以上に増えた頃から、脳血管疾患による死亡率が急降下していることが分かるでしょう。
心筋梗塞などの心疾患が増えることもありません。
さらに、コレステロールの値が増えれば増えるほど、脳出血や脳梗塞の発生率が減少する傾向が示されたデータもあります。
これまで言われてきたコレステロールについての“常識”とは、まったく逆の結果が示されていることを、もっと冷静に受け止めるべきでしょう。
コレステロール値が高い人は鶏卵も控えるべきと言われますが、下の図では、卵をたくさん食べている人のほうが、コレステロール値が低く出ています。
ただし、このグラフは集団による比較なので、自分自身がどうかは、自分で食べてみないと分かりません。
体質には個人差があるので、卵を食べるとコレステロール値が上がる人もいます。
あくまでも、集団による比較では、このような結果が出ているということです。
まとめると、動物性タンパク質の摂取と血液中のコレステロール値には、巷(ちまた)で言われるような因果関係は見られないということです。